ギターのチューニング方法にはいくつか特殊なものがあります。なかでも半音下げチューニングは、多くの曲で使われるが、やり方が分からない人も多いと思います。
そこで今回は、誰でも分かるように半音下げチューニングのやり方を解説します。半音下げチューニングを覚えて、好きな曲の演奏を思う存分楽しみましょう。
半音下げチューニングの基礎知識
まずは、半音下げチューニングの基礎知識の部分から説明します。ギターを練習していく際に非常に役に立つ知識なので、ぜひとも読んで理解してほしいです。もし半音下げチューニングのやり方だけ知りたい場合は、「半音下げチューニングのやり方」から読んで頂いても構いません。
半音下げチューニングとは
半音下げチューニングとは、ギターのチューニング方法で、「6弦すべての弦の音を半音ずつ下げる」方法です。いつも通りのギターのチューニングをした後、すべての弦の音を半音ずつ下げます。
タブ譜では最初に「Half Step Down」もしくは「Half Down」と表記されます(小文字表記もあり)。
いつものチューニングの場合、弦の音の高さは、6弦から順に
ミ(E) ラ(A) レ(D) ソ(G) シ(B) ミ(E) |
となっています。これを半音ずつ下げるので、半音下げチューニングの場合の弦の音の高さは、6弦から順に
ミ♭(E♭) ラ♭(A♭) レ♭(D♭) ソ♭(G♭) シ♭(B♭) ミ♭(E♭) |
となります。
1.2.「半音」「♭」って何?
「♭(フラット)」は音が半音低いことを意味しています。「半音」というのは「全音」の半分です。
このことを詳しく説明します。
「全音」や「半音」というのは、「二つの音の高さの差」を表しています。「全音」は、ピアノで言うと、となりあった「白い鍵盤」と「白い鍵盤」の「音の高さの差」です。「半音」は、ピアノで言うと、となりあった「白い鍵盤」と「黒い鍵盤」の「音の高さの差」です。
下の図を見てもらえると分かりやすいと思います。

たとえば、「ド」と「レ」の音の差はピアノの白鍵1つ分なので、「全音」となります。「ド」と「レ♭」の音の差は、白鍵と黒鍵ひとつ分の差なので、「半音」です。
ちなみに「♭」がその音の「半音低い音」を表しているのに対して、「#(シャープ)」はその音の「半音高い音」を表しています。だから、図にあるように、「ド#」と「レ♭」は同じ鍵盤で、同じ音になります。
また「ミ」と「ファ」の間と、「シ」と「ド」の間に黒鍵がないのは、この2つの音の差が実は「半音」だからです。
ギターで「半音」は?
ギターでも「半音」について説明します。実はギターのフレットは「半音刻み」になっています。たとえば「1フレットと2フレットの音の差」は必ず「半音」です。図で確認してみましょう。

ギターでは1フレット分の音の差が「半音」、2フレット分で「全音」です。ギターの音の配置でも、「ミ」と「ファ」の間と、「シ」と「ド」の間は、「1フレット分の差」つまり「半音」になっていることを確認しましょう。
半音下げチューニングの音をご用意したので、実際に耳で聞いてみて参考にしてください。
半音下げチューニングのやり方
半音下げチューニングのやり方は簡単です。基本的にはいつもどおりノーマルチューニングをして、それから全ての弦の音を半音ずつ下げればよいです。もちろん、はじめから半音下げチューニングの音に弦をチューニングしても良いです。
半音下げチューニング時の弦の音は以下のようになっています。
6弦「E♭(ミ♭)」 5弦「A♭(ラ♭)」 4弦「D♭(レ♭)」 3弦「G♭(ソ♭)」 2弦「B♭(シ♭)」 1弦「E♭(ミ♭)」 |
なんらかの方法ですべての弦が上記の音になっていれば、半音下げチューニングは完成です。念のため一般的ないくつかの方法を下記に説明しておきます。
チューナーを使った半音下げチューニング
チューナーを使う場合、大抵はチューナーに半音下げの機能が付いています。フラット(♭またはFLAT)の記号があればそれを押して、画面に「♭」の記号表示させた状態で、画面の通りにチューニングしましょう。
もし、半音下げチューニングの機能が付いていない場合でも、表の通りになるように、いつものチューニングより少しずつ音を下げていって、チューニングすれば良いです。
6弦「E♭(ミ♭)」 5弦「A♭(ラ♭)」 4弦「D♭(レ♭)」 3弦「G♭(ソ♭)」 2弦「B♭(シ♭)」 1弦「E♭(ミ♭)」 |
ピアノを使った半音下げチューニング
ピアノを使ってチューニングする場合は、上記の表の音をピアノで出して、その音に合わせます。
ピアノとギターでは音の周波数が異なるため、通常のチューニングとやや音の感じが異なるかもしれませんが、余程違和感を感じなければ、演奏に問題になるレベルではないと思います。
音叉等を使う場合の半音下げチューニング
普段から音叉等を使ってチューニングしている場合は、少しややこしいかもしれません。この場合は、まず音叉で基準の弦を合わせ、その後、他の弦を半音低い音に合わせていきます。そして最後に基準の弦を半音下げます。
たとえば、音叉で5弦をAの音に合わせ、それを基準に実音でチューニングする場合、まずはいつも通り5弦をAに合わせます。
その後、4弦をチューニングしますが、この時に、4弦を、5弦の4フレットの音(D♭=レ♭)に合わせます。これで、4弦は半音下げチューニングができていることになります。
そして3弦以下は、いつも通りのやり方でチューニングすれば、自然と半音下げチューニングになります。6弦まで半音下げで合わせたら、最後に5弦をA♭の音になるようにチューニングします。6弦が半音下げになっていれば、6弦の5フレットの音に、5弦合わせれば良いです。
半音下げチューニングのメリット
いちいちチューニング方法を変えるの面倒くさいって思うかもしれませんが、ギターのチューニングを半音下げるのには理由があります。そして、その理由がメリットにもなり、デメリットにもなります。
弦の張力が弱まりチョーキングしやすくなる
チューニングを半音下げるという事は当然弦を緩めるという事なので、その分弦の張力は弱くなります。それによって弦を押さえやすくなったり、チョーキングしやすくなったりします。
低音域が広がりヘヴィなサウンドを表現できる
チューニングを半音下げるという事は、低音域が半音広がる(フレット一個分)と言う事です。それによってレギュラーチューニングでは出なかった低音が出るようになり、ヘヴィなサウンドを表現できるようになります。
ヴォーカルの音域に合わせる
半音下げチューニングにすることによってヴォーカルが歌いやすい音域にすることが出来ます。例えばバンドのヴォーカルが喉を傷めていつもの高音が出せないとなった場合は、半音下げてあげる事で無理なく歌える音域になるという事です。
太い弦を張れる
これは最初の張力のポイントと被るところがありますが、半音下げチューニングにして張力が弱まるという事は、太い弦を張ってもレギュラーチューニングの時よりはネックに負担がかからないし、弾きやすいという事になります。
半音下げチューニングのデメリット
細い弦では向かない
0.09など細いゲージを使ったまま半音下げチューニングするとダルンダルンというかベロンベロンとした音になってしまいます。その場合は0.10などいつもより太めのゲージに変えたほうが半音下げチューニングの本来のサウンドを鳴らせます。
高音域が半音狭くなる
半音下げチューニングによって全体的に半音下がる訳ですから、低音域は半音広くなりますが、高音域が半音狭くなります。
チョーキングの音程のコントロールが難しくなる
ギターを半音下げチューニングにすると弦の張力が弱くなって押さえやすくなったりチョーキングしやすくなりますが、いつもより力を入れなくてもチョーキング出来てしまうため、気負い余って自分の出したい音よりも高くなったりしてしまうなど、音程のコントロールが難しくなります。
半音下げチューニングのまとめ
ギターの半音下げチューニングは要するに、6弦の音を以下のように合わせれば良いという結論です。
6弦「E♭(ミ♭)」 5弦「A♭(ラ♭)」 4弦「D♭(レ♭)」 3弦「G♭(ソ♭)」 2弦「B♭(シ♭)」 1弦「E♭(ミ♭)」 |
これだけ頭に入れておけば、何らかの手段を使って、半音下げチューニングは可能です。はじめは理解が難しいかもしれませんが、根気よくやってみてください。毎日少しずつ半音下げチューニングを練習すれば、自然とその音に慣れて、スムーズにできるようになるはずです。
もし演奏中にチューニングが狂いやすかったり、上手くいかない場合はギターのチューニングが狂う!4つの原因と解決策にその原因と思われる内容と解決策をまとめているので、ぜひ参考にして欲しいです。